入社したばかりの新入社員にとって、有給休暇の取得は少しハードルが高く感じられがちです。しかし、有給休暇は労働者の権利。
マナーを守って適切に申請すれば、安心して活用できます。
この記事では、有給休暇の基本ルールから上司への伝え方、業務の引き継ぎ方まで、具体例を交えて解説します。これらを参考に、計画的に申請を進めましょう。
有給休暇の取り方とマナー
有給休暇(年次有給休暇)は、働いた期間に応じて給与を受け取りながら休める制度です。労働基準法で定められた従業員の権利であり、疲れをとりリフレッシュする大切な機会になります。
しかし、新入社員はまだ社内の業務に慣れておらず、有給取得のタイミングややり方に不安を感じることも多いでしょう。そこでまずは、有給休暇の基本的な仕組みと取得する際のマナーについて見ていきましょう。
有給休暇の意味と仕組み
有給休暇とは、法定の要件を満たすことで付与される休暇で、給与をもらいながら休める制度を指します。主に労働基準法に基づき、継続勤務や出勤率などの条件をクリアした場合に付与されます。
この制度の目的は、心身の疲れを癒し、健康的な生活を維持することです。家庭の事情や急な体調不良にも対応できるため、必要な時に活用したい権利です。
労働基準法が決める有給休暇の条件
有給休暇は労働基準法で条件が定められており、以下のすべてを満たした場合に付与されます。
- 継続して6か月以上勤務していること
- 過去6か月間の全労働日の8割以上を出勤していること
これらの条件を満たすと、最低10日間の有給休暇が付与されます。その後は勤続年数に応じて付与日数が増えていき、最長で20日まで増えます。
新入社員にも与えられる有給休暇
新入社員の場合も、同様の条件を満たせば有給休暇が付与されます。
たとえば4月に入社した場合、6か月後の10月1日に10日間の有給が付与されます。その後も、1年6か月後に11日、2年6か月後に12日と、勤続期間が延びるごとに日数が増えていきます。
多くの企業で、入社後6か月未満の期間は有給休暇が付与されません。
前借り制度を設けている会社もありますが、これは法律で定められた制度ではないため、必ずしも利用できるわけではありません。
まずは就業規則で自社のルールを確認することをおすすめします。
有給取得のマナーが重要な理由
有給休暇は従業員の権利ですが、職場で利用する際にはマナーも大切です。特に新入社員の場合、周囲に与える影響を配慮することで信頼を損ねずに取得できます。
たとえば、繁忙期に急に休みを取ったり、直前に申請したりすると、他の社員に迷惑がかかりやすくなります。適切な手順や連絡を守り、周囲への配慮を欠かさないことがポイントです。
新入社員に付与される有給休暇の基本

有給休暇付与の条件と日数
労働基準法の条件を満たすと、有給休暇が付与されます。以下は一般的なフルタイム社員の場合の付与日数の例です。
| 勤続期間 | 付与日数 |
|---|---|
| 6か月 | 10日 |
| 1年6か月 | 11日 |
| 2年6か月 | 12日 |
| 3年6か月 | 14日 |
| 4年6か月 | 16日 |
| 5年6か月 | 18日 |
| 6年6か月以上 | 20日 |
(注:入社時に6か月間で所定出勤日数の8割以上を満たすことが前提です。)
新入社員の有給はいつから付与される?
新入社員は、労働基準法で定める要件を満たすと入社6か月後に有給休暇が付与されます。
具体的には、出勤率が8割以上であれば、入社日から6か月後に10日間の有給が付与されることになります。
企業によっては試用期間中の取得制限や、独自の前借り制度を設けていることもあります。いずれにせよ、入社直後は有給対象外のことが多いので、制度の開始時期は就業規則や人事から確認しておきましょう。
年5日の取得義務化と注意点
2019年の労働基準法改正により、年10日以上付与される労働者には年5日間の有給休暇取得が義務付けられました。入社6か月で10日間の有給が付与された場合、その1年以内に最低5日は取得する必要があります。
企業は取得申請がない場合でも、労働者の意向を考慮したうえで時季指定して取得させることが求められています。新入社員であってもこの枠に含まれるため、早めに計画して最低5日を目安に消化することが大切です。
有給休暇申請の手順:会社のルールと必要な準備

申請前に上司への相談とタイミング
有給休暇を取得する前に、まずは直属の上司やOJT担当者に相談しましょう。希望日が決まったらなるべく早めに報告するのが基本です。仕事の繁忙具合を考慮し、場合によっては仮申請のようにあらかじめ日程を確認してもらうと安心です。
一般的には、取得予定日の1週間以上前を目安に相談・申請することが望まれます。直前に「明日休みます」といった形で伝えると、周囲に与える影響が大きくなるので避けましょう。
有給申請手続きの流れ
有給申請の手続き方法は会社によって様々です。多くの企業では社内申請書や専用システムを使って申請する流れになっています。まずは就業規則や社内ポータルで手順を確認し、必要な書類を準備しましょう。
また、メールや口頭での報告が必要な場合もあります。会社のルールに従い、申請後は必ず上司の承認を得て、正式に日程を確定させるようにしてください。
上司への報告・依頼の仕方と例文
上司に休暇許可を依頼する際は、丁寧な言葉遣いで要点を簡潔に伝えましょう。メールや口頭で伝える場合、休暇取得希望日と理由、業務引継ぎの予定を盛り込むと親切です。
たとえば、「○月△日に有給休暇を取得させていただきたいと考えております。休暇中は〜さんに引継ぎをお願いしています。急ぎの場合は携帯までご連絡ください。ご確認よろしくお願いいたします。」のように伝えると円滑です。
件名:年次有給休暇取得のお願い
○○部長
お疲れ様です。営業部の◯◯です。
○月△日(曜日)に有給休暇を取得したく存じます。
休暇中は□□さんに担当業務を引き継いでもらう予定です。
急用がある場合は携帯にご連絡いただければ対応可能です。
お手数ですが、ご了承いただけましたらご承認いただけますと幸いです。
このように、上司に伝える際は前置きの挨拶や依頼の言葉で丁寧に始めるのがポイントです。
また、同僚への引継ぎ内容を明記することで上司も安心して許可しやすくなります。
有給取得時の連絡方法と具体例
上司への連絡方法と文例
休暇が承認されたら、上司へ正式に連絡しましょう。メールの件名には「有給休暇取得のご連絡」などと明記し、本文でも日付・業務引継ぎ内容・連絡先を簡潔に書きます。
口頭で伝える場合も、挨拶をしたあとで「○月△日に有給をいただきたいです。よろしくお願いいたします。」と用件を端的に伝えます。どちらの場合も、礼儀正しく感謝の気持ちを添えることが大切です。
同僚への共有・代替案の伝え方
有給取得が決まったら、チームメンバーや関係者にも休暇予定を共有します。共有方法には主に次のような方法があります。
- 共有カレンダーに予定を入力して知らせる
- チームメールやチャットで取得予定日を伝える
- 休暇中の業務担当者を明確にする
同僚への連絡時は、引継ぎ先や連絡先を明記しておくと安心です。急ぎの仕事が発生したときの担当者や、自分への緊急連絡先も併せて伝えておきましょう。
チャットツールでの連絡
SlackやTeamsなどのチャットツールで休暇予定を連絡するのも一般的です。ただし、公式な記録としてメールやカレンダーへの登録を併用するのが望ましいでしょう。
チャットで共有するとリアルタイムに伝えられますが、情報が流れてしまうリスクがあります。
チャットを使う場合も、内容は簡潔にまとめ、必要であればメールで改めて通知するなど二重のフォローを行うと確実です。
周囲に配慮する有給取得のポイント

繁忙期を避けるポイント
会社には決算月や繁忙期など特に忙しい時期があります。こうした時期に無理に休暇を取ると職場の負担が大きくなり、「非常識」と思われることもあります。可能なかぎり繁忙期は避け、閑散期や業務が落ち着いている時期に計画するといいでしょう。
ただし、急病や緊急時にはやむを得ず繁忙期でも休む必要があります。その場合は前後の業務負担を最低限にする工夫をし、事前に引継ぎやフォローをしっかり行いましょう。
業務引継ぎと引継ぎ資料の準備
休暇前には自分の業務を引き継ぎ、後任者が困らないよう準備します。引き継ぎのポイントとしては、まず作業の進捗状況や今後の予定を整理して共有することです。
次に、必要な資料やパスワードなど重要な情報をまとめておきましょう。
具体的には以下のような内容を伝えるとよいでしょう。
- 進行中のプロジェクトの課題と進捗状況
- 使用中ツールや資料の保管場所
- 社内外の担当者連絡先
- 休暇中でも対応できる緊急連絡先
急な休暇を避ける計画性
急な有給取得は周囲に影響を与えやすいものです。可能な限り事前に予定を立て、繁閑を見極めて計画的に申請する習慣をつけましょう。
特に新入社員は突発的な用事でも、一度計画的に組んでおくと安心です。どうしても急な休みが必要になった場合は、引き継ぎを速やかに行い、上司やチームにも早めに連絡しましょう。
まとめ
以上、新入社員が有給休暇を取得する際に押さえておきたい基本的なポイントを解説しました。有給休暇は労働者の大切な権利ですから、適切な申請方法とマナーを身につけて、安心して活用してください。
まずは社内ルールに従い、取得条件と申請手順を確認しましょう。そのうえで、上司への相談は余裕をもって行い、チームメンバーにも予定を共有します。繁忙期を避け、業務の引継ぎや連絡を丁寧に行えば、あなたも安心してリフレッシュできます。
これらのポイントを押さえれば、新入社員でも有給休暇を気兼ねなく取得できるはずです。